「事業を通じて、携わる人、世界を幸せにできる経営者になりたい。」(川口)
王今まで、仕事で崖っぷちに立たされたことはありますか?
川口以前、九州で不燃材を大量に納めたことがあったんです。ところが取り付け後、若干表面に変なものが見えるという指摘を受けまして。全く機能上の問題はないんですけど、見た目があまり良くないという指摘で「一週間で全部、現地で塗り直し」に。一週間かつ現地で特殊な塗装をやれる職人さんがなかなかいないわけですよ、全国的にも。とにかく手当たり次第、九州地区中心に探して、東京や中部圏からも職人さんを呼び寄せて、まぁナントカ一週間がかりで。泊まり込みで私もずっと九州にいました。
王成し遂げた時は…どうでしたか?
川口当然、自分自身の達成感もありましたけど、お客様からはものすごい評価をしてもらいました。以後、そのお客様からは常に我々に仕事をですね、発注をいただけるようになったという逆のメリットもあったと思っています。
王そういうのは全てに共通しますよね。困難があると、逆にそれをやり遂げた時に、周りからの評価が上がる。完成して「1」なのが、「10」とか「100」で評価してくれるというケースが多いですよね。
川口ありますよね。常にお客様から用意されるハードルは、高ければ高いほどいい、と思っています。当然乗り越えるのは大変ですが、ひとたび乗り越えると、ついてこなくなりますよね。競合他社が。
なので、王さんも言われた通り、お客様からの評価は圧倒的に高まるんでね。乗り越える壁が高ければ高いほど、競争相手がどんどん少なくなってくる。
王仕事で新卒の人たちに、壁にぶつかった時にどうやって越えていくかというのは、よくセミナーでも話すんですけどね。
私は壁が大きいと、跳ね返えされてしまうので。そこで精神的につらくなってしまうので、いかにして向きをかわすかとかね(笑)
川口横に穴を掘るとか、むりやり飛び越える必要はないだろうとか。やっぱり発想の転換というか、アイデアでいろんなモノづくりができますよね。「ないモノをどう生み出すか」。そこは王さんのビジネスと通じるものがありますね。
川口王さんは崖っぷちに立たされたことはありますか?
王沢山あります。
自分が内容に納得できないままで取材班が海外ロケに行ってしまったんです。スタッフが帰ってきて、中身を見たらやっぱり良くない。スタッフはどんどん編集して、工程を先に進めてしまったんですね。
川口王さんは迷っていたのですか?
王はい。それでいよいよ放送の一週間くらい前に、苦渋の決断で「放送できない」と。このクオリティの程度では。
川口えー?
王と言って。結局放送は取りやめました。
川口そこからは?
王謝りまくりました。出演者に「ギャラは全部払います」と。「制作費も全部出します」と頭を下げまくって。当時の400万円を無駄にしてしまったんです。
責任問題として「もっと早く決断すればよかった」と反省しつつも、どうしても、「皆一生懸命やっているしな」と情があり…。「でもこのまま放送したら一気に評判落ちるかもしれない」「評判落としたら挽回は厳しいし…」と迷いに迷って結局放送直前になってやめました。
そうしたら、さっきの川口社長の話と同じなんですけど、逆の評判が出たんですよね。つまり「え、1本ボツにしたの?」「そこまでやるか」「あの番組はスゴい!」というふうに。他局の人も含めて、「王さんというプロデューサーは何者だ?」ていう(笑)
川口それだけこだわってやっているんだな、という…
王ええ、こだわりぬいてやっていました。但し、そこから400万円のマイナスをどこで帳尻合わせて埋めていくか、地獄が待っていたんですけどね。
だから、先ほど、川口社長が九州へ出かけていって、冷や汗と本物の汗をかいてという…その汗というのはやはり、最終的には結実したのだと思います。
あの川口社長は、どういう経営者になりたいですか?
川口う~ん、どんな経営者ですか…自分が事業を通じて、携わる人、世界を幸せにできる経営者になりたいな、という風に純粋に思いますよね。それをやれるからこそ、経営者なんだ、という思いで。そればかり考えていると言っても過言ではないですね。
王合板の事業、これからマーケット的には?
川口合板そのものの特性は、直近でも再評価されています。木材も循環型社会というか、ライフサイクルにも当てはまるので、いろんな可能性があると思います。
合板以外にも広く化粧板という領域でいけば、どんどん世の中のライフスタイルが変わる中、見た目を良くするといった基本的な装飾にプラス機能も求められるんですよね。そこで、安全性や快適性などの機能を付加した製品など、時代のニーズと共に、新しくより良いものが求められるというのは今後も続くでしょうね。
王そういう環境で萬代さんの事業領域が増えるみたいな構想はないんですか?
川口常に我々も、新しい分野になにか挑戦する機会やきっかけがあり、携わっていることが少しでも生かせられる技術などがあれば、どんどん積極的にやっていきたいと常に思っています。